夜間定時制の灯を消してはならない
河合美喜夫(立川高校定時制の廃校に反対する会)
9年間の夜間定時制廃校反対のたたかい
この9年間、都立夜間定時制高校の存続を求める運動を続けています。2006年に小山台、雪谷、江北、立川の4校の夜間定時制の閉課程(廃校)が決定しましたが、存続を求める声が大きく広がりました。映画「学校」の山田洋次監督や都立両国高校定時制の卒業生で報道写真家の石川文洋さんらが存続を求める声明を発表し、東京弁護士会や関東弁護士連合会も廃校反対の声明を出しました。そして何よりも該当校のある地域の人びとが存続を求める声をあげ、毎年1~2万筆の署名を都教委に提出してきました。その結果、すぐに廃校にはならず、生徒募集が続きました。
4校のうち雪谷は2018年に、江北は2019年に生徒募集停止となり、すでに廃校になりました。残るは小山台と立川の2校となりましたが、廃校反対運動はさらに大きく広がりました。小山台は多文化共生教育の先進校、立川は全校生徒が現在140人もいる普通科最大規模の定時制であるために、都教委も強引に生徒募集を停止することが出来ませんでした。一時は、小池都知事も都議会において「夜間定時制高校は重要な役割を果たしている。存続を求める意見があることも承知している」と答える程でした。
しかし、昨年10月の教育委員会で、立川は来年度生徒募集を停止する予告をおこないました(募集停止は1年前に予告することになっています)。私たちは、今年1月早々から、立川の募集停止予告の撤回と小山台の存続を求める署名を集めました。駅頭で、集会で、ありとあらゆる方法で署名を集めました。その結果、昨年を上回る署名数になりました。
突然、新たに5校の夜間定時制の廃校計画が浮上
ところが、小池都知事の3選直後から事態は動きました。8月22日の教育委員会で「困難を抱える生徒に対する支援の取組」として「都立高校におけるチャレンジサポートプラン(案)」が示され、その中で桜町、大山、北豊島工科、蔵前工科、葛飾商業の5校の夜間定時制を募集停止にする方針が盛り込まれました。寝耳に水とはこのことです。さらに驚いたのは募集停止の理由でした。夜間定時制は小規模で教育効果がないから廃校にするというのです。「困難を抱える生徒に対する支援」というならば、困難を抱える生徒が多く学んでいる夜間定時制こそ充実させるべきです。そもそも、小規模だから夜間定時制が廃校にすると言っておきながら、なぜ生徒数の多い「大規模」な立川を廃校にするのか矛盾しています。
私たちは急きょ、9月25日に立川、小山台の署名と合わせて約2万2000筆の署名を都教委に提出しました。10月5日には、「7校の夜間定時制の存続を求める緊急集会」を開催しました。元都立高校定時制教員の多賀哲弥さんが「あらためて夜間定時制高校の存在意義について考える」のテーマで講演し、その後、参加者から怒りの発言が相次ぎました。桜町高校定時制同窓会の前会長からは「都教委の暴挙を許さずの決意を多くの都民と共有する」との熱いメッセージが寄せられました。集会の内容は、東京新聞の「こちら特報部」が大きく報道しました。
夜間定時制を切り捨てる教育委員会
10月24日の教育委員会では、立川高校定時制を来年度、募集停止することを決定しました。これによって、在校生が卒業する2028年3月に廃校となります。小山台、桜町、大山、北豊島工科、蔵前工科、葛飾商業の夜間定時制を2026年に募集停止にする予告を行いました。教育委員会では「チャレンジサポートプラン」に関する意見募集の結果も公表されました。夜間定時制については、募集停止に反対または危惧する意見が30近くありますが、賛成意見は1、2しかありません。2万2000筆以上の署名の付いた存続を求める請願も資料として出されましたが、教育委員の中で夜間定時制について発言した人は誰もいませんでした。「チャレンジサポート」などという美しい言葉を使いながら、困難を抱える生徒が多く学んでいる夜間定時制を切り捨てる、これが現在の教育委員会です。
しかし、私たちはあきらめてはいません。募集停止の「予告」であって、まだ正式決定ではありません。都民の声に背を向け、わずか数分、議論ではなく感想を出すだけの教育委員会でこのような重大な決定が行われては絶対に許されません。
7校の夜間定時制廃校計画
定時制校名 所在市区 募集停止年度 閉課程/廃校年度
立川 立川市 2025年度 2027年度(2028年3月)
小山台 大田区 2026年度 2028年度(2029年3月)
桜町 世田谷区 同上 同上
大山 板橋区 同上 同上
北豊島工科 板橋区 同上 同上
蔵前工科 台東区 同上 同上
葛飾商業 葛飾区 同上 同上